前立腺肥大症は腎不全などの怖い合併症を併発することもある
排尿困難や、その排尿困難が原因となった残尿感、頻尿、尿失禁などは、私たちの日常生活を不快かつ不便にします。
しかし、前立腺肥大症の困るところは、排尿トラブルだけではなく、悪化すれば深刻な合併症を発症させることもあるということです。
前立腺肥大が引き起こした排尿困難によって体内に残ってしまった尿には、たくさんの雑菌や老廃物が含まれています。
そのため、尿道炎や膀胱炎などの尿路感染症や血尿、腎不全などの合併症が生じてしまうことがあります。
肥大が進行すると合併症に
前立腺肥大そのものは、仮に肥大が進んでも悪性のものではなく、良性の病気といえるものです。
要するに、物理的に排尿が思い通りにならないだけですから、尿が順調に出せれば問題は少ないのです。
ところが、一度肥大した前立腺は、元に戻りません。初期ならば改善する方法はありますが、肥大が進行するとと簡単にはいかなくなります。
排尿がますます困難になり、すると、膀胱に溜まった尿が悪さをして、合併症をひき起こし、善意の存在であった前立腺を悪者にしてしまうわけです。
初期に適切な対策をしておけば、前立腺を悪者にしないようにすることも可能です。
膀胱炎から腎不全、尿毒症へ
合併症の第一は排尿の思い通りにならないことから、膀胱にいつも尿が溜まった状態になりそこに細菌が感染して「膀胱炎」を起こします。
この段階で適切な治療をしないでいると、その影響が尿管を伝わって尿をつくっている腎臓に飛び火し、働きが悪くなります。
そして腎機能不全を起こし、今度は「尿毒症」に進行してしまいます。これは死を招くこともあるおそろしい病気です。
このほか、残尿には細菌が繁殖しやすく、これが膀胱や前立腺に炎症を起こし、高い熱を出したりします。「尿路感染症」です。そして場合によっては「腎盂炎」も起こります。
人工透析の恐れも
人間の体内を循環している体液は静脈を通って腎臓に集められ、そこで濾過されます。
そして、きれいに濾過された体液はまた体内に戻されて循環し、残った不必要な体液は膀胱に送り込まれ、そこから尿道を通って排泄されます。
尿にはさまざまな雑菌や老廃物が溶け込んでいます。前立腺が肥大して尿がうまく出なくなり、常に膀胱や尿道に尿が残っていると、尿の中の雑菌が繁殖し、または、外から侵入してきた雑菌が絶好の繁殖環境の中で増え、その雑菌による感染症が発症します。
膀胱炎だったらまだしも、さらに、尿の経路を逆上り、腎臓までもが雑菌に感染することもあります。
そうなれば、当然、腎臓の機能は悪化します。そして、腎不全になります。
腎不全が進行すれば、病院で人工透析を受けなれば生命が維持できない状態になることおあります。
実際には、人工透析が必要になるほど悪化する前に腎不全の自覚症状があって病院の治療を受け、危険一歩手前で食い止められることが多いのですが、前立腺肥大症には腎不全を招く危険性があるのも事実です。
その証拠に、人工透析まではいかないものの、前立腺肥大症の合併症、腎不全の代表的な自覚症状である血尿に悩まされている人は少なくはありません。
前立腺肥大症の合併症で血尿も
前立腺肥大症の進行した症状として「血尿」もあります。
肥大した前立腺は血管も太くなっていて、充血したりすると、わずかな刺激で出血、血尿となります。
血液が膀胱に入ると、そこで血の塊となり尿道口をふさぎ、さらに尿の出を悪くする、という悪循環になります。
更には、血尿はさまざまな原因で出るものですから、血尿が出たら癌を疑わなければならないわけです。
もちろん前立腺の癌を第一に、腎臓や尿管の癌も視野に入れなければなりません。
血尿が出たら早急に検査をしましょう。
これらの怖い合併症を抱えないようにするためにも、前立腺肥大症による排尿トラブルはできるだけ早期に解決しておく必要があります。